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そばはどこで生まれたのですか? また、そばはいつどこで食べられたのでしょうか?

2014年07月31日 

  そばはどこで生まれたのですか? また、そばはいつどこで食べられたのでしょうか?

 答

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さて、ご質問の そばはどこで生まれたのですか?そばはいつどこで食べられたのでしょうか? ですが、 農業植物としてのソバの原産地は 中央アジアとも中国南部ともと言われています。 そのあたりまだはっきりしません。

日本に伝わったのはいつ頃か定かではありません。 縄文遺跡の土壌からソバの花粉が見つかったということもあるそうですが、 ソバを栽培しその実を食べていた有力な証拠はありません。 食べていたかもしれませんし、食べていなかったかもしれません。

ちなみに現在ソバを最も消費しているのはロシアです。 そばの実をおかゆにしたカーシャ、 そば粉で作ったパンケーキのブリヌイなどが有名ですが スープやシチューに入れたりソーセージの中に入れたり ソバを使った伝統料理がたくさんあります。

日本でのソバ栽培は記録としては奈良時代まで遡れます。 8世紀初め頃救荒作物としてソバを栽培するよう おふれが出たという記録があるそうです。 この頃だとソバの実を食用にしていたと思われます。 しかし、ソバの実は固い殻に守られていますので 殻をむいて粉にするのは容易ではありません。 一番簡単な方法はソバの実をそのまま茹でてやると殻と身が分かれます。 ただしその実は粉には出来ません。 茹でた粒をそのまま食べたり 雑炊のようにしていたのだろうと思います。

粉にするには製粉技術が日本に伝わり、 普及するまで待たねばなりません。 製粉といえば、石臼です。 この石臼についての最も古い記述は、7世紀推古天皇の時代にあるようです。 この頃の石臼は最先端技術で小麦やソバを粉にするというより、 金や朱というような貴重な鉱物を粉にして採取するのに使われていたようです。 ※朱は丹(に)と呼ばれる酸化水銀の鉱石から採られます。

その最先端技術が普及するのに大きな役割をしたのがお寺です。 昔は博多の港が中国から帰国する留学僧が最初に上陸する場所ですから 最新の情報や技術がもたらされます。 福岡市に今も残る承天寺というお寺に 「饂飩(うどん)蕎麦(そば)発祥之地」という石碑があります。 承天寺は鎌倉時代13世紀の中頃中国から帰国したお坊様によって建立され、 そのお坊様が当時の最新技術の製粉方法を伝えたとされています。

ただ、ソバや小麦を粉に出来たからといって 麺状のそばやうどんが出来るわけではありません。 麺状のそばは江戸時代の初め頃まで「そばきり」と呼ばれていました。 そのころまで、ふつう「そば」といえば「そばがき」をさします。 赤穂浪士で有名な大石内蔵助もそばがきを好んで食べていたそうです。

「そばきり」については16世紀後半、織田信長が活躍していた頃ですが、 信州の木曽の定勝寺というお寺の工事完成の祝いに そばきりを振舞ったという記録があるそうです。1574年のことです。 ただそれ以前にも「そばきり」はあったはずですが、 記録に残っていないので何もわかりません。

秀吉の時代になると、街道筋に旅人相手にそばきりを出す店や、 大工事をしているところに人足相手にそばきりを出す店が出てきます。 今も東京に「砂場」という、そばの老舗がありますが、 もともとは大阪の店で、大阪城築城のとき工事用の砂置場の近くにお店を出したので砂場という名前になったそうです。 ということで、 「そば」がいつどこで食べられ始めたかはっきりしたことは判りません。

新しい料理が出来たからといってクックパドに投稿などとできる時代はありません。 それどころか、文字もろくに知らないような庶民の考えた料理方法ですから 記録もほとんどありません。 先に書いたお寺などの話も、そこまではさかのぼれる、 それ以後は確実にあっただろうと推定できるに過ぎません。 ですから、室町時代のおわり頃16世紀に いまの「そば」に近いものが信州辺りでできたのではないかなあ と推測できるだけなのです。 石臼などの高度な石の加工技術や、 目の細かいフルイを作る技術が一般化した後だろうとしか言えないのです。 そのあたりのことを詳しく知りたければ 三輪茂雄先生の「粉と臼」、「粉の文化史」などを読んでみてください。

余談ですが、昔の製粉方法に「胴搗き(どうつき)」というのがあります。 きねというか太い大きな棒でついて細かく粉砕する方法です。 大量に製粉するには水車を使うのが一般的ですが、 水車を作る技術というのが高度な技術で普及するのは江戸時代になってからです。 20年ぐらい前は「石臼だ、ロール製粉だといっても、 胴搗きのそばが一番旨い」という人もいましたが、 胴搗きはやかましいし、効率が悪いし、石臼製粉のほうが売れるしで、 ほとんどすたれてしまいました。 胴搗き製粉はスタンプミルとも言って 電動でですが今もやっている製粉会社もあります。

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