Q&A |
ホームページをご覧いただいた皆様からのご質問です。 |
Q歯ぬかりするような蕎麦になってしまいます |
2015年06月20日 |
打った十割蕎麦の質問です。 打った日によって歯ぬかりするような蕎麦になってしまいます。原因が水回しなのか、練り込みなのか、または茹で方なのか、解りません。どうか宜しくお願いいたします。 |
A 答 |
喜心庵のホームページをご覧いただき有り難うございます 。 まず始めに、「歯ぬかり」ということばは、歯に抵抗のない、あまりかたくないそばのことを言う人もいますし、 ひとによって違う意味で使うようですので,歯にニチャつくような歯切れの悪さとして、以下、説明させていただきます。 もし違う意味でしたら、お手数ですがその旨を書いてもう一度ご質問してください。 歯ぬかりの原因はそば打ちの全行程に原因があるといっても過言ではないので以下、長くなると思います。 まず、粉に原因がある場合 大きく分けて3通りあります。 1) 2番粉、3番粉中心にブレンドした粉 1については、打ち易い粉、十割蕎麦向きなどとして売られています。 本来小麦粉(強力粉)を4割以上まぜ、そばのコシより小麦のコシで食べるべきものを、つながりやすいということで十割で打つひともいますし、そういう売り方をするそば粉屋さんもあります。 一般的な対策としては、細めに打って芯の残るような生茹でにして、なるべく茹でたてで食べることです。 茹ですぎはいかん。とか、のびたらまずい。といわれる代表的なそばです。 お勧めとしては同割で打つことですが、「十割」にこだわられるのなら数%〜十 数%さらしな粉を混ぜるとかなり改善します。抜き取られている一番粉を補充してやるわけです。さらしな粉がない時は数%なら打ち粉でも構いません。 2ですが、粗挽き粉もいろんなタイプがあって全体的にザラザラしたものや、いわゆる「無ぶるい」とかいってサナゴの混ざっているものなどが代表的です。この手の粉は個人的に好みではないので数多く経験したわけではないのですが、ザラザラタイプはとにかく丁寧に時間をかけて水回しをしてよくこねてやることです。 無ぶるいタイプはフルイにかけてサナゴを取り除きます。 あと、粗挽きとは限りませんがいわゆる「一本挽き」と言われるモノの中に見られるのですがサナゴまで粉にしたタイプもあります。(本来の一本挽きは玄そば を殻ごと丁寧に挽き、殼とサナゴをふるい分けたものです。)サナゴまで粉にしたものは、好みもあるでしょうが、個人的には十割りに向かないと思います。小麦粉を3割4割混ぜてやると結構食べられます。そばがきにすると意外においしいのですが、他のクセの少ないものに風味付け程度にブレンドするぐらいしか利用法を思いつきません。 3は、とにかく丁寧な木鉢仕事に尽きます。ただやっかなのは1や2の要素を持った粉もあることです。 次に木鉢仕事について。 十割そばを打つ方に少なくないのですが湯ごねあるいは湯もみとも言いますが、 お湯で水回しをする場合です。室温に近い温度まで生地を冷ましてから延しに入らないと、どんな良い粉を使っても歯ぬかりを起こします。 「捏ね」も大切ですが微妙な差しか出ません。ただ此の微妙な差は意識し始めると結構気になります。 簡単に此の差を実感するには、まあこれくらい捏ねればつながるだろう、というぐらい捏ねたら半分に分け、一方をそのまま延し、切りを施し、残った半分を3 倍くらい捏ねて延して切ってください。食べ比べれば差はわかると思います。 菊揉み60回などと回数でいう人や3分とか5分とか時間で言う人もいますがあくまでも目安です。粉によってベストの硬さは違いますし、打つ人の体力や体型、環境によっても違います。それによって捏ね回数も違います。当然捏ねる時間も違ってきます。 捏ねは二八に比べ十割は粉の差が大きく出ます。 捏ねの目安を人に言うときには生地が「湯上がりの餅肌」になるまでと言ってい ます。しっとりと吸い付くような肌触りでいながらさらっとした感じです。乳幼児のようにぷにょぷにょに柔らかくても構いませんし筋肉質の硬めでも構いません。粉によっては柔らかめでないと打てないものもありますし、ただ柔らかいと 捏ね回数が多く必要になる傾向があるように思います。柔らかすぎるといくら捏 ねてもなかなか餅肌になってくれなかったりします。 ちなみに私は指にそばがついた状態ではわかり難いので、くくって、くっつかない程度捏ねたら手を洗ってから菊もみに入ります。 余談ですが十割り蕎麦の加水、水回しは馴れることがありません。今でも緊張します。 今、打っている粉は加水率55%前後ですが54%だとひび割れが大きくなって 延し、切りに余計に時間を食ってしまいますし56%だとなかなか餅肌になってくれません。 ベストの加水量が55%かと言えばそうとも言えず54.4%の時もあれば 55.6%の時もあります。 指先の感覚を頼りに勘で決めていきます。指先が赤信号、目が黄信号、データが 青信号を示すなんてよくあります。指先の信号を信じないと大抵失敗します。十本の指を目にして12の目で確認するという言葉を毎日実感しています。 茹で不足だと歯ぬかりをおこすことがあります。 粗挽き粉は歯ぬかりを起こしやすいと思いますが茹でむらが起きやすいためだと思います。 (粗挽き粉はただつなげるだけではなく、丁寧な木鉢仕事を要求されます。) 粉によって火の通りがちがいますので何分とかはいえませんので、いろんな時間で 試してみてください。 |