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初めてのそば打ちで一時間で打ち上げられたとか,しかも茹でても切れたりしてないようで、すご
い です。
私は最初,一時間半もかけてばらばらになってしまいました。
さて、茹で上がりが堅いとか。
打つ時間が長くて蒸発により堅くなったということは,考えにくいです。蒸発乾燥は表面におこるの で
,捏ねや伸しの時にひびわれて,ばらばらになってしまいますので打つのに時間がかかったことが原 因ではないと思います。
そばの洗い方に原因があるのではないかと,おもいます。
最近の流行は,とにかく堅さを強調するために茹でてすぐに氷水など冷水に,いきなりつけるという
のが主流です。おそらくお読みになった本にもそう書いてあるのではないでしょうか。
これは今のそば打ちの基本になっている片倉流の流れを汲むやり方ですが,片倉流のそば打ちは切
り べら30本以上(1ミリ以下)の細打ちが信条です。
いきなり氷水で冷やすのは、細打ちが絶対条件なのですが、並打ち(1.3ミリ前後)か,太打ち
の場合 でも,堅ければ堅いほど良いと思い込み,また言葉にした時「手早く冷水でしめる」としたほうがよさ
げに聞こえるためか,いきなりの「冷水じめ」を書いてある本が多いようです。
並打ち太打ちの場合いきなり冷水にいれると、堅さが強調され過ぎ,人によっては砂を飲み込む様
な と言いましょうか,のどを通りにくいと感じます。こんな感じではないでしょうか。
でしたら湯きりと面水(「つらみず」と読みます)をやってみてください。
並打ち,太打ちの場合は、湯きりと面水という工程を必ず入れるのが昔からのやり方です。
「湯きり」というのは,そのままですからお判りになると思いますが,あげざるを2〜3度上下に
軽く振 って湯をきります。ラーメン屋さんみたいにテボざるを振り回して湯きりする訳ではありません。
「面水」は,湯きりをしたそばに直接水をぶっかけて,粗熱を取ることです。老舗系のそば屋さん
で は、まだやっているところも多いのでご覧になったこともあるかもしれません。面水をしてから,たっ
ぷりの冷水で軽く洗うように,しめます。後は水を良く切って盛りつけます。
湯きり,面水をすると歯切れが良くなり,そばの甘味,香りが強くなります。たったこれだけのこ
と かとお思いでしょうが、これだけで全く違いますので,いっぺん騙されたと思ってやってみてください 。
そばはどの工程でどれだけ空気と水を含ませるかで味わいが違ってきます。ですから打ち方だけで
な く,茹で方,洗い方,盛りつけ方,食べ方でも味わいが違ってきます。いろんなやり方で楽しんでくだ さい。
もしこれで改善しなければ,またご一報ください。
追伸
「きりべら」というのは,一寸(約3センチ)に何回包丁を入れるかでそばの太さをあらわしたもので
す。東京では江戸時代から「きりべら23本」が御定法とされています。
ですが,細打ち,並打ち,太打ち,の基準というものは、地方により,また店によってもちがい統
一 基準はありません。それもまた地方色や,個性ですので良いのですが,初心者にはわかりにくいでしょ
うから,うちの基準を書いておきます。数字に縛られるのはよくありませんので,あくまでもご参考に してください。
細打ち きりべら30本以上(1ミリ以下) 茹で時間30秒以下
並打ち きりべら23本前後(1,3ミリ前後) 茹で時間40秒前後
太打ち きりべら20本以下(1,5ミリ以上) 茹で時間1分以上
並打ち,太打ちの場合は必ず面水をしますが細打ちの場合はそば粉の種類やコンディションによっ
て は切れることもあるので面水をしません。うちは生粉打ち(十割そば)だったので茹で時間は短めです。 (生粉打ちは火の通りがはやいので)
茹で時間は粉の種類や割粉(つなぎに使う小麦粉)の種類や量によりますので,目安としてお好み
で伸 張短縮してください。水回しに誤りがなければ,倍以上茹でても切れたりしません。