Q&A   
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こしを出すための更科ブレンド
2010年12月22日 

 蕎麦のこしについてですが庵主は更科をブレンドしたらこしが出ると書かれておりますね早速打ちたいので「500g=挽引き粉250g:更科粉150g:強力粉100g=2:8蕎麦」で更科粉を何g?又は500gに対して何%計り何ccの水で溶いて糊にして蕎麦を打てば良いのでしょうか?教えて下さい〓
、色々なご事情はあると思いますが一日も早くお店の再開を心よりお祈り申し上げます。今後とも何かと蕎麦打ちに付いて御指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します。

 答

 申し訳ございません。正直言ってご質問の答えをご用意できません。
もともとのそば粉がどんなものか,またどういったコシを求めておられるのかわかりません。どうもコシというのは、人により意味が違っているもので。

3割のさらしな粉と2割の強力粉だと水で打てる比率だと思いますが,5割のそば粉の性質によると思います。たとえば,製麺特性の高い(つながりやすい)キタワセなら水だけでつながる可能性はかなり高いと思います。在来種なら産地にもよりますがキタワセよりは難しくなると思います。

信州大粒や常陸大粒のようなデンプンの多い品種だとさらに難しくなります。そば製粉のカギを握る挽き分けやふるい,あるいは、ふるった粉のブレンドなどでも大きく変わってきますので,同じ品種でもそば粉屋さんやそのそば粉のブランドによっても違ってきます。

安全策を採るのなら
230cc位の水に10gから20gのさらしな粉で糊を作って様子を見ながら追加で水を加える方法で試されてはどうでしょうか。

違うやり方としては,100〜150ccの熱湯で水回しをして追加の水を氷水など冷水を使うといったやり方もありますが。

私はコシと硬さをイコールとは思いません。もちろん,硬さもコシの重要な要素だとは思いますが。

そばには,そばのコシがあると思います。わたしが目指しているのは,御膳粉の十割そばのコシです。プチプチとはじけるような歯切れのよいコシです。御膳粉の十割そば以外では出せない食感です。硬いだけのコシではありません。韓国冷麺の噛み切れないほどの硬さとは異質なものです。

というわけで,さらしな粉を混ぜるとコシがよくなると書いたのは堅くなるわけではありません。そばが硬すぎるとか,にちゃつくとか、臭いという質問に対して答えたものです。以下を読んでもらえば分かりますが,大きな石臼という何百万もの設備投資をしたそば粉屋さんや,いわゆる硬い,臭いそばが好きな方を攻撃するような内容ともとられてしまいかねません。

食なんて個人の趣味嗜好の問題です。
例えばにおわない納豆はどうも私は好きになれません。納豆を買うときには匂いの強い臭い納豆に決めています。私には攻撃する意図など無く,質問者のお困りの内容の原因と結果を明らかにして説明しているだけなのですが。

とうゆうことでホームページにQ&Aでのせるときは,その点を気をつけるようにしています。

茹でたてのそばのコシはデンプンによるものです。割粉のグルテンはのびた時のコシです。茹でたての時には粘りゴシになります。

最近は,石臼一本挽きなどといって,二尺の大きな石臼で,本来ならサナゴとして取り除くべき部分まで粉にしてしまうそば粉があります。サナゴは米で言えばヌカにあたる部分でたんぱく質や繊維質を多く含みます。

なかには挽き残しのサナゴを混ざったままで荒挽きと称しているそば粉もあります。
本来の荒挽きとは全然違う物です。本物の荒挽きは歯切れの良いそばになります。たんぱく質や繊維質が多いと打ちやすいし,そばがきにするとおいしいのですが,こういう粉はそばのアクも多いし歯ぬかりを起こしやすいそばになります。

歯ぬかりをごまかすため,というかより硬さを出すため,水分傾斜が大きくなるような茹で方(芯まで火が通っていない)で,かえって歯ぬかりをひどくしているような感さえあります。

そういったそば粉は,本来のエステル香や甘いフルーティな香りとは異質な,枯れ草とヌカの混ざったような匂いがしますし,そばの甘さよりもアクの雑味の方が強いと思うのですが,それを豊かなそばの風味として好む人もいます。

私自身は,こういうそばに,カツオ節を使っていることをことさらに強調した魚臭い汁を出されると,生ゴミをあさっているような気分になります。

まったくもって好みの問題です。こういったそば粉でもさらしな粉を数パーセントから一割程度混ぜるとさほど違和感無く打てて歯切れがよくなって,香りや甘みも若干改善されますし,水分傾斜を大きくしなくてもそこそこ硬さもでるという意味でのコシです。食感が悪いとか匂いが気になるのなら使わないのが一番ですが、そうもいかない事情があったりもするでしょうから、さらしな粉か打ち粉を混ぜるか割粉の量を増やすなどの方法で改善できるとアドバイスしたまでです。

繰り返すようですが私の好みとかぶるであろう人へのアドバイスです。豊かなそばの風味と感じ,コシに硬さを求める人ならいわゆる一本挽きの水分傾斜の大きい硬いそばを目指した方が良いと思います。

ご質問の文中の配合のように3割以上さらしな粉を混ぜるのも面白い試みですね。
打ち難くなりますが,いろいろ試してみてください。試すということは成功を目指しながらも失敗を覚悟することだと思います。私事ですが,途中で失敗だと気づいても,四苦八苦しながらも最後まで打って一口なりとも食べるようにしていました。

失敗の原因は,そば粉ではなく自分自身の無知と技量不足にあるのですから,途中で投げ出してしまうとそばに申し訳ないからです。それに難しい生地を打つ練習になったような気がします。

「水分傾斜」とは科学的な定義や測定方法,グラフの書き方などあるようですが,簡単に言えば,麺の中心と表面の水分の差のことで,一般的には中心部の含水量が低ければ低い程硬くなります。私個人の好みではそばに限らず極端な水分傾斜で出した硬さは一部例外を除いて麺の本来のコシとは認めませんし,食べ難いだけだと考えています。

もっとも食は個人個人の口が判断することですから,それぞれで好みのものを食べれば良いことです。

「歯ぬかり」とは元々,団子屋さんやお餅屋さんあるいは和菓子屋さんで使われる言葉で
大福や団子など餅菓子を作るのに蒸し時間や搗きの手間を惜しんだときにあらわれる微妙な歯切れの悪さというか,歯切れの良さの無いことををいった言葉です。

転じて,そばの場合,繊維質の多いそば粉や捏ね不足,茹で不足などでおこる歯切れの悪さを行った言葉です。コシといえば硬さのこと,硬ければ硬いほどよいという風潮の現在ではもはや死語となってしまいましたが。

ちなみに餅菓子の方も油脂や食品添加物で簡単に食感の向上,歯ぬかり防止が出来るようになったし,消費者も気にしなくなったり,手作り感や無添加感を出すためか,逆に歯ぬかりをおこすようなものが,モチモチ感があるとしてもてはやされているようで,やはり死語になってしまったようです。

本物が分かる消費者は余り言葉にしない上品な方が多いようで,知る者は語らずというところでしょうか。

 

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