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 符牒(村瀬忠太郎 蕎麦通 昭和5年)  

 なんの商売にもその仲間だけに通用する符牒があるが、蕎麦屋同志で普通に用いられているもの二、三例を挙げると、

 

   キン 分量を多く盛ること。
  サクラ 分量を少なく盛ること。
  キレイ 同上
  バク 宵越しのもの、残りもの
  オヒネリ 一杯きりの註文
  ツキ 通し物の時一ツのことを云う。
  マジリ 同上二ツのことを云う。
  マク 同上雑種で数の多いものを一まとめにすることを云う。
  包丁下 新しいこと。
  イタ 蕎麦の切れたる時のこと。
  カカリモノ  同一方面へ持ち出す時、他家の分も合わせて持ち出すものを云う。
  カチ 二種の物の多き方を指して云う。
  ゴソウ 出前の後口のなき場合に云う。

まだこのほかにも符牒は幾千も用いられているが、ここにはその一班に止めて置く。

 

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