花巻そば |
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2010年 3月1日 | |||||||
花巻そばとは熱々のかけそばの上に、ちぎった焼き海苔をのせたそばのことです。江戸時代の百科事典『守貞漫稿』にも、「花巻 浅草海苔をあぶりて揉み加ふ」と書かれています。調理の簡単さもあって江戸では、 おたなの蕎麦屋でも屋台の蕎麦屋でも定番でした。 海苔をそばにのせた様子を、桜の花びらを撒き散らした風情に見立てての命名のようです。本来は「花撒きそば」と書くべきものかもしれませんが、昔から「花巻そば」と書かれおり、辞書にも「花巻そば」でのっています。そばにも海苔にも巻く要素などひとつもないのに、なぜ花巻きなのか? このあたり花巻そば一番の謎ですね。 シンプルなだけに上にのせる海苔がすべてといってもいいかもしれません。海苔と言う食材は、その品質はピンからキリまであって、その差はこれを同じ海苔という言葉でひとくくりにしていいものかと思うくらいです。冬に採れる柔らかい上等な新海苔を使った花巻そばはまことに美味です。 海苔屋さんに行くと、そば用の海苔なんていうものがあります。寿司屋さん向けの寿司海苔と比べて値段も安く、品質もかなり劣ったものなんですが、そのあたり蕎麦屋で花巻そばがハヤラなくなった理由かもしれません。 ところで、江戸のむかしからの海苔の原料につかわれていたアサクサノリですが、今や幻の海藻になってしまったことをごぞんじですか? そんなばかな海苔なんていくらでもあるじゃないか、とお思いでしょうが、実は昭和の終わり頃から、海苔の原料はアサクサノリから、スサビノリという別種類の海藻に切り替わっていたのです。 そういうこともつい最近まで気がつきませんでした。いつのまにか日本の海の環境はかわっていたのですね。ちなみに、環境省はアサクサノリを絶滅危惧種に指定しています。 ノリのおもな種類
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参考資料 : 『近世風俗史』(喜田川守貞著 岩波文庫) 『江戸語の辞典』(前田勇編 講談社学術文庫) 『ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑』 『三重大学藻類学研究室』 |
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