そばの食べ方作法 |
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2010年 6月 1日 | |||||||||
そばを食べるのに作法ってあるの?というお話です。 そのご主人はこう言っていました。「いなかに行くと俺の顔を知らないそば屋がいるんだよ。よりによって俺に向かってそばの食べ方をいちいち講釈しやがるんだ。腹が立つから手づかみで食ってやったぜ。はっはっはっはっは…」すごい人もいたものですが、そば屋がお客様に向かって食べ方をあれこれいうのも野暮ですよね。ようするに好きなように食べればいいということだと思います。 とはいえ、そばに「作法」なんて堅苦しいものは無いとしても、こうすればもっとおいしく食べられるよっていう食べ方はあります。世間でよく言われているそばの食べ方を、おいしく食べるためにという視点で検証してみたいと思います。
■ ツユにつけるのはそばの3分の1 そばにツユをどっぷりつけて食べるなんて野暮だねと、ばかにしていた男が、死ぬ前に一度ツユをたっぷりつけて蕎麦を食べたかったというのは、落語のマクラでよくあるはなし。 実を言えば、そばツユの醤油やかつお節の匂いは、そばの香りをじゃまするのです。だからそばの下3分の1だけにツユをつけるというのは、そばの香りを楽しむためには理にかなっています。 ですから、そばの香りを大事にしているおそば屋さんの中には、ちょっとつけるだけでもそばがおいしく食べられるように、あえてツユの味を濃いめにしているところもあります。 しかし、ゆで置きで食べる地方の郷土そばや出前のそばは、そばの表面が乾き気味になっていますので、薄めのつゆにどっぷりひたして食べた方がやっぱりおいしいようです。
■ そばは噛まない これはナシです。もしまったく噛まなかったとしたら、そばのコシなんてわからないでしょう。「江戸っ子はそばは噛まないもんだ」なんて言っている落語家さんも、そばを食べる演技ではちゃんと7回噛む仕草をしています。 ただ、口にくわえたそばを途中で噛み切ってセイロや丼鉢に落すのは、見た目が美しくはないですね。そういう意味では「そばは噛まない」というより、「噛み落とさない」です。
■ そばは音をたててすする そばをすするとき、空気もいっしょに吸い込むことで、鼻腔にそばの香りがひろがります。このいっしょに吸い込まれる空気が音の原因です。ですからそばをすすると、どうしても音をたてることになります。 古風な小笠原流礼法では、そばを食べる時も音を立ててはいけないのだそうですが、おいしく食べるということでしたら、音が出るのはしかたがないかなと思います。音をたてまいとして、おはしにそばを巻き付けて、スパゲッティーみたいに召し上がるかたをお見うけますが、おいしくはないのだろうなと思います。
■ そばにワサビを塗る ワサビをそばの上に塗り付けるようにして召し上がる方をたまにお見受けします。某グルメ漫画で描かれていた刺身にワサビを塗る食べ方の影響なのでしょうか。 まぁ刺身だったらワサビの消臭力で魚の生臭さを消すのでいいかなと思うのですが、これがそばだとワサビが強すぎてそばの風味をそこねます。 そばの風味を大事にしたいなら、ワサビはツユにも入れない方がいいくらいのものです。 こういえばまるでワサビは邪魔者みたいですが、実はそうなんです。「じゃあなぜそばの薬味にワサビがあるの?」っていうことなんですが、これは飾りみたいなものなのです。ないと何んだか見ためがさびしい、だから付けている、それだけのものです。 だだし、鰹節の匂いが強すぎるツユにだったら、魚臭さをワサビで押さえる効果はあると思います。歴史をさかのぼれば、ワサビを使うようになったのとダシに鰹節を使うようになったのが、だいたい同じ頃なんです。おそらくダシの魚臭さを消すために使い始めたのでしょう。 ですから、そばに対してワサビがあるのではなくて、鰹ダシに対してワサビがあるのだと理解してもよいのではないでしょうか。
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