蕎麦猪口
 
(2008.8. 1)
(2014. 4. 14)ちょっと書き直しました
 
そばちょく
 

■ 「そばちょこ」か「そばちょく」か

蕎麦猪口は「そばちょこ」と読むべきか「そばちょく」読むのが正しいのか? どっちでもいいことですがちょっと気になりましたので蕎麦猪口について調べてみました。

『角川新版古語辞典』で「ちょこ」を引いてみると「ちょく」の転とあります。 つまり「ちょく」という読み方が先で後から「ちょこ」ができたということです。すでに江戸時代には猪口に「ちょく」と「ちょこ」の両方の読み方があったようです。

ということで、「そばちょこ」も「そばちょく」もどちらも正解ということで。でも「そばちょく」と言ったほうがなんとなく通っぽく気取った感じはしますけどね。

ちなみに江戸時代には、蕎麦猪口と 湯呑み、酒猪口、小鉢との区別がハッキリしていた訳ではありません。これらを大雑把に猪口と云い、蕎麦屋でツユを入れるのに使っていた食器を後で蕎麦猪口と呼んでいるだけです。

ですから江戸時代には、どうみても湯呑みにしか見えない物や、お酒の猪口をそのまま大きくしたような蕎麦猪口もありました。

ところで「猪口」の語源は何でしょうか。ちょっと調べたところ3つありました。

  1. 中国福建語あるいは朝鮮語で鐘(チョク)という器に猪口(ちょく)という漢字を当て字した 。
  2. シンプルなデザインなので直(すなお)なという意味で直(ちょく)というようになった。
  3. 猪の口猪の口 形がイノシシの口に似ているので猪口(ちょく)というようになった。

  1. の福建朝鮮由来説は江戸時代の朱子学者、新井白石の『東雅』という本に書いていることだそうで、これを語源として採用している本や辞典が多いようです。

■ 蕎麦猪口の各部分名称

各部名称

■ 蕎麦猪口の底のかたち

あげぞこ あげ底
底があげぞこになっているのであげ底といいます。
べたぞこ べた底
高台がほとんど無く、底がたいらでベタッとしているので
じゃのめぞこ 蛇の目底(じゃのめぞこ)
真ん中に丸いへこみがあり二重丸のように見えます。この二重丸が蛇の目(じゃのめ)模様に似ているので蛇の目底といいます。または底のへこんでいない部分を高台と見たてて蛇の目高台ともいいます。

■ すたれた見込み(みこみ)の模様

内側の底の部分を見込みといいます。アンティーク物には見込に模様を描いているものが少なくありませんが、今の蕎麦猪口では見込に模様があるものはほとんどありません。

蕎麦猪口の見込左の写真は当サイト管理人が、根拠も無いのに江戸時代古伊万里だと思い込んでいる蕎麦猪口ですが ごらんください、見込みに小っちゃな花模様が描かれていますでしょう。

この花は梅なんだろうかと思っていましたが、くわしいかたにお聞きしたところ牡丹なのだそうです。デフォルメしすぎてもはや牡丹には見えませんが、花のまわりの点々で牡丹の花びらの重なりを表現しているのです。

現代では最初からツユを入れて出すお店が多くなりましたし、お客様もつゆを残されるので、模様を付けても見てもらえないのでムダということで無くなったのでしょうかね。

■ 蕎麦猪口の素材

磁器 磁器
地の色が白くて硬くて表面が滑らか。有田焼、瀬戸焼、砥部焼、渋草焼、出石焼など。
陶器 陶器
地の色が土色で磁器に比べると低い温度で焼かれています。割れやすく汚れが染みやすい欠点があるので、そば屋ではあまり使われません。唐津焼、萩焼、備前焼、信楽焼、益子焼など

■ 蕎麦猪口の模様の色

染め付け 染め付け
釉薬を掛ける前に呉須という青色絵の具だけで模様を描いたもの。模様が釉薬でコーティングされているので、長年使っても模様がすりへらないという長所があります。手描きは高価なので、そば屋ではゴム判や転写紙で模様を印刷した量産品がよく使われるます。
錦 色絵
青色以外の模様を付けたもの。色数の多いものは錦(にしき)ということもあります。また青い染め付け模様の上に色を焼き付けたものを染錦ということもあります。そば屋のようなヘビーな使い方で長年使っていると模様がすり減って色が薄くなる欠点があります。これも手描きは高価なので、蕎麦屋用には転写紙印刷のものがよく使われます。

 

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