■ 五色そばとは
昭和5年に薮忠主人の村瀬忠太郎(安政6年〜昭和13年)が書いた『蕎麦通』という本によりますと、雛祭りには赤白緑黄黒の五色のそばを出前を取って、おひな様にお供えする習慣があったのだそうです。
もともとは普通の二八そばをおひな様にお供えしたのですが、菱餅の赤白緑にちなんで、三色のそばが作られるようになりました。負けず嫌いの江戸っ子かたぎなのでしょうか。それに負けじと五色のそばが作られるようになったようです。
もっとも明治時代にはもう忘れられてしまったらしいのですが。今回はこの五色の雛蕎麦を再現してみたいと思います。
■ どうやって色をつけるのか
『蕎麦通』によりますと
青いのは草切りという餅草の芽を入れたもの、黄は鶏卵の蛋黄ばかりを入れたもの、白は純白の晒し粉に蛋白ばかりを入れたもの、黒は板昆布を焼いて焦がして粉末にたものをを入れたのと、黒ごまを粉にしたものを入れたものと両用に製するが、紅だけは本紅を用いて淡紅色に仕上げるのである |
とありました。
つまり、青(緑)はヨモギ、黄色は卵黄、白は卵白、黒は焼き昆布か黒ごま、赤の本紅はベニバナからとった紅、ということになります。だいたい青黄白黒はなんとかなりそうですが、赤のベニバナの紅はちょっと入手困難です。
和菓子屋さんが餅や饅頭に色を付けるみたいに、合成着色剤いわゆる食紅を使えば簡単なのですが、実は麺類を合成着色剤で色づけすることは、法律だか厚生省告示だかで禁止されているらしいのです。ですからラーメンなども黄色いビタミンB2で着色しています。着色じゃありませんよビタミン強化ですよ、っていう言い訳ですね。
もちろん、着色剤を禁止されているのは、食品衛生法の対象になっている飲食店や製麺工場です。個人で自分や家族が食べるそばを打つ場合は、合成着色剤を使っても いっこうにかまいません。
何かベニバナ紅の代替品を探さなくてはと思案していると、冷蔵庫にボルシチを作ったときの赤いビーツが少し残っていることを思い出しました。ためしに卸し金で摺ってみたら、まっ赤な大根おろしのようなものができました。これを使えばなんとかなりそうです。
という次第で、今回は赤はビーツ。
何で色をつけるかは自由なんですが、緑色は菱餅に由来する事をかんがえれば、やっぱりヨモギということのなるかと思います。生のヨモギはまだないので乾燥粉末ヨモギを。
白は卵白ということなんですが、卵白は入れない方がおいしいのですよね。たぶん、白を表現するために絶対必要なのではなく、薮忠さんはつなぎ目的で卵白を使ったのではないかと思います。おそらくは、ほかの赤緑黒も卵白つなぎだったのではないでしょうか。とりあえず今回は卵白は使わない事にします。
黒はごま。たぶん黒ごまをすり鉢ですって使ったのだと思います。今回はする手間のない黒練りごまを使いました。
さて、残るは黄色です。他のそばに卵白つなぎを使わないことにすると、卵黄だけを使うというのはちょっともったいない気がします。それに卵黄だけだと黄色が濃くなりすぎるような気がするのでたまごは全卵を使います。
■ 材料 |
|
白いさらしなそば粉 |
400 g |
つなぎの小麦粉 |
100 g |
|
たまご(M玉) |
1個 |
乾燥よもぎ |
1 g 〜 2 g |
黒ねりごま |
ティースプーン1杯 |
すりおろしたビーツ |
5 g |
|
作り方は赤白緑黒の4種は基本的に柚子切りそばと同じでそば糊でつなぎます。ただし黄色だけは卵でつなぎますので、そば糊はつかいません。
■ 黄色
要するに二八そばを水の代わりにたまごで捏ねるわけです。
さらしなそば粉400gのうち5分の1の80gと小麦粉20gを使います。
たまごのつなぐ力は非常に強力ですので、さらしなそばにつきものの熱湯で捏ねるとか友つなぎとかしなくても簡単につながります。
微調整で水を少量くわえてこねあげます。あとはふつうの二八そばと同じように打てます。
■ 赤色、白色、緑色、黒
残りのさらしな粉320gと小麦粉80gをつかいます。柚子切りそばと同じように、そば糊でこねます。柚子切りそばをご参照ください。
後で水分の多い摺りおろしたビーツを混ぜますので少し固めにこね上げます。捏ね上がりましたら4等分します。
白はこのままで水分を微調整程度に加えただけで捏ねなおして打ちます。
赤は目の細かい卸し金で摺りおろしたビーツを混ぜて捏ねなおして打ちます。ただ今回はちょっと赤が濃すぎたような気がします。ビーツの量をもう少し減らしたほうがいいかもしれません。
黒は黒い練りごまをティースプーン1杯混ぜて打ちます。
さて、緑ですがこれが一番難物でした。乾燥よもぎは繊維が長く包丁にからみついて切りづらいのです。乾燥よもぎは水を少し加えてスリ鉢でよくすって、ドロドロにして混ぜて打てばうまくいきました。
■ 参考まで
食用赤色3号(別名エリスロシン)及びそのアルミニウムレーキ 食用赤色40号(別名アルラレッドAC)及びそのアルミニウムレーキ 食用赤色102号(別名ニューコクシン) 食用赤色104号(別名フロキシン) 食用赤色105号(別名ローズベンガル) 食用赤色106号(別名アシッドレッド) 食用黄色4号(別名タートラジン)及びそのアルミニウムレーキ 食用黄色5号(別名サンセットイエローFCF)及びそのアルミニウムレーキ 食用緑色3号(別名フアストグリーンFCF)及びそのアルミニウムレーキ 食用青色1号(別名ブリリアントプルーFCF)及びそのアルミニウムレーキ 食用青色2号(別名インジゴカルミン)及びそのアルミニウムレーキ
下記の食品に使用してはならない
カステラ きなこ 魚肉漬物 鯨肉漬物 こんぶ類 しょう油 食肉 食肉漬物 スポンジケーキ 鮮魚介類(鯨肉を含む) 茶 のり類 マーマレード 豆類 みそ めん類(ワンタンを含む) 野菜 わかめ類
厚生労働省行政情報各添加物の使用基準及び保存基準
|