■ 茶そばの汁
茶そばに濃口醤油と鰹だしの普通のそばつゆが合わない気がします。
ここでいう茶そばは,更科の抹茶を効かした変わりそばの茶そばです。
薄く色付け程度の茶そばや乾麺の茶そばだと,あまり気にならないのですが,抹茶の風味,味が楽しめるほど抹茶を入れると普通のそばつゆと抹茶が喧嘩してしまうような気がします。
他の変わりそばだと気にならないし,柚子きりや紫蘇(大葉)きりは普通のそばつゆとの相性抜群だと思いますが,茶そばだけは合わない気がします。
そこで今回は,茶そばに合うそばつゆをとり上げます.
ダシの話はいくらでも書けるのですが,終わりになるべく,簡単に説明するにとどめますので興味のある方は御参考にしてください。
とりあえず,3タイプ紹介します。どのタイプも更科そばや変わりそば,素麺には合いますが,普通のそばには物足らなさを感じるかもしれません。
本題に入る前に,ここで俎上にあげる茶そばについてちょっと御注意を,
抹茶の風味を堪能しようとする茶そばは,一人前粉100gに対して抹茶5〜6g使います。
この量は,普通の抹茶2〜3杯分に相当する量です。食べ過ぎると急性カフェイン中毒で,動悸や手の振るえが起きることがあります。軽くせいろ2枚程度で,夜も眠られなくなります。夜,お召し上がりになるときは,御注意下さい。
1.かつおと昆布の合わせだしに淡口醤油
昆布は真昆布,かつお節は鹿児島,枕崎の上枯れ節の雄節の血合の少ない部分を使いました。
真昆布は軽くさっと水洗いして,一晩水出しにし,火に架ける前に取り出します。
沸騰直前に薄削りの削りたてのかつお節を入れ火を止めます。
混ぜたりせず,ただ,かつお節が鍋の底に沈むのをじっと待ちます。
かつお節が鍋の底に沈んだら,かつお節がほとんど鍋に残る感じでそっと濾します。
決して絞ったりしません。
(二番出汁はおいしいダシが取れます。是非御利用下さい。)
そっと濾した
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だしこし
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一番出汁にみりんを加えて2割程度蒸発するまで煮詰めます。
砂糖と塩で8〜9割方味を決め,淡口醤油で仕上げて火を止めます。
味加減はお好みですが,吸い物より濃いめの甘め位が丁度良いと思います。
2.いりこと昆布の合わせだしに淡口醤油
いりこは頭とはらわたと尾びれを取り除きます。
真昆布といりこを軽く水洗いして,一晩水出しにします。
昆布といりこを取り出し火に架けます。
酒を入れて煮きります。
後は,かつお昆布の合わせだしと同じ要領で,砂糖,塩と薄口醤油で味を決めます。
3.干瓢と昆布の合わせだし
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昆布と干瓢 水出し
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干瓢,真昆布は軽く水洗いして一晩水出しにします。
干瓢,昆布を取り出し火に架けます。
みりんを入れ煮きります。
塩と砂糖で味をほぼ決め淡口醤油で仕上げて火を止めます。
味付けは,他の二つに比べて甘さ控えめの方が良いような気がします。
かつお節について
かつお節は静岡,高知,鹿児島が3大産地です。
かつお節は南に行くほど脂が落ちて上品になるといいます。しかし今はどの産地もほとんど南太平洋での遠洋漁業で獲っているので原材料の差はないはずですが,鹿児島のかつお節がクセが少なく静岡はコクが強く,高知はその中間的な感じがします。
もちろん製造所の個性もありますので一概にはいえないとは思いますが,以前それぞれの産地からいくつか取り寄せたとき,そういう傾向があると感じました。多分それぞれの産地の主な需要家の違いではないかと思います。
静岡の場合主として関東向けとすると,濃口醤油を効かせた料理に使うことが前提で,鹿児島が関西向けなら素材を生かした味付けならなるべくクセの無いかつお節が好まれるのでしょう。あくまでも想像ですが。
枯れ節
枯れ節というのはカビづけをした,かつお節です。
カビ付けをしてないものを「荒節」と呼ぶことがあります。
枯れ節使用というと高級感が出るので安い枯れ節は無いかという需要家の要求で,1回だけカビ付けしたほとんど普通のかつお節と変わらない枯れ節もあります。が通常,3回以上カビ付けをしたものを「枯れ節」「本枯れ節」といい,5回以上カビ付けしたものを「上枯れ節」と言いことがあります。
カビ付け回数の基準はJASでは,2回以上カビ付けしたものを枯れ節というとなってますが,JAS認定基準ですから,JASマークをつけなければカビ付け回数に基準は無いようです。カビ付け回数での呼び名の違いについては,地域やメーカーでおのおの基準を設けているところもあるようです。
かつお節の血合い
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血合を避けて削った鰹節
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めんつゆのCMでは血合の無い見事なうす削り鰹節が映像として使われます。私はその手のCMを見るたびに不味そうに感じてしまいます。一般的な濃口醤油のめんつゆに血合は不可欠です。血合が無いとコクが無いというより気が抜けたような感じがします。
そば屋でよく使われる宗田節はその大部分が血合です。
鰹節の血合は普通のそばつゆには重要な要素です。今回の汁は茶そばにあわせて薄口醤油を使い可能な限り上品なだしを目指しましたのでなるべく血合の部分を避けて削りました。
昆布について
真昆布,利尻昆布,羅臼昆布,日高昆布などの種類があります。
今,利尻昆布や羅臼昆布が人気で値段が高く,真昆布はお手ごろな値段で助かります。
このHPは昆布相場に影響力が無いので安心して書けますが,真昆布が最も扱い易い昆布です。
昆布は煮出すと海草臭さというか磯臭さが出ます。煮だしでは旨みは十分に出ませんので水出しにします。
水出しに最も向くのが真昆布です。利尻昆布は長時間の水出しには向きません。2〜3時間ぐらいが限度でしょうか。それ以上だと緑白色に濁り海草臭さが出ます。
真昆布は十時間以上水につけても大丈夫ですし,ほぼ完璧に旨みが溶け出すので,利尻昆布の1/3〜1/2の量で十分です。真昆布は利尻,羅臼に比べて柔らかいので,出しガラも適当に刻んで味噌汁や煮物の具に使えます。難点を言えば,かつお節と合わせたとき,白濁し易いことです。料理によっては気にすることも無いし,気になれば暫くグラグラと煮込んでやれば濁りは取れます。
ダシ用の昆布を選ぶときは肉厚のものをえらんでください。使い慣れた昆布があればそれをお使い下さい。
いりこについて
いりこも水出しが基本です。
最高のいりこは銀色に輝き,お日様に干した布団のような匂いがし,「いりこ風味だしの素」のような魚臭さは全然ありません。こういういりこは,「白口」あるいは「白口いりこ」と呼ばれます。ところによっては,「白」「銀」「銀付き」などとも呼ばれているようです。
同じカタクチイワシが原材料でも「白口いりこ」と東日本で「煮干し」と呼ばれるものは全く別物のだしになります。特に秋
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いりこの生殖巣
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に取れたものは最高です。産卵期直前に当たるので,身の脂が少なく上品なだしが取れます。こういういりこははらわたを取るとき赤っぽい小指の爪の先ぐらいの生殖巣が入っています。これが結構おいしい珍味です。
干瓢について
干瓢が巻き寿司の具だけでなく,ダシになるということは,知っている人は当り前のことで,知らない人には信じ難いことかもしれません。精進料理では昆布,干椎茸と並んでポピュラーなダシです。甘い上品なダシが取れます。今回の茶そば用の汁としては,干椎茸は匂いが強いので敬遠しました。干シメジや干舞茸を使ってみるのも面白いかと思います。
茶そばと淡口仕立ての汁は結構いけると思うのですが,合う薬味が思い当たりません。
薬味の要らない汁を目指すべきかなと思います。
淡口醤油に替えて白醤油を使われてもいいと思います。
淡口や濃口と根本的に違い,白醤油は小麦が9割以上で味噌麹を使うそうです。
液体の麦味噌ですかね。もっとも麦味噌は大麦ですが。
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薄口醤油でつくった汁 |
白醤油でつくった汁 |
■ 材料 |
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白いさらしなそば粉 |
200 g |
つなぎの小麦粉 |
100 g |
抹茶 |
18g |
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