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ゆずきり
柚子切

 
2010.12. 1

ゆずきりそば

■ 柚子切りとは 

(少々前置きが長いので、急ぐかたは 柚子切りの作り方 へ)

 柚子きりとは,すりおろした柚子の皮を練りこんださらしなそばのことです。

さらしな粉を使って打ちますので,基本的なさらしなそばが打てなければ打てません。簡単に打とうとするならば,割粉つまり小麦粉を6〜7割入れれば,水でこねて普通に二八と同じように打てます。それでは面白くないので,今回は小麦粉の割粉2割りの二八で打とうと思います。

二八で打つといっても,さらしな粉は粘りが無いので,割粉を3割以下にする場合は水では打てません。粘りの素になる増粘料が必要です。

入手し易い増粘料は卵,山芋等ですが,癖の少ないさらしな粉では,卵や山芋の風味が表に出ていわゆる「卵きり」「芋きり」になってしまいます。

そこで,さらしな粉をお湯で糊化したものを増粘料として使います。そば本体と同じ粉をつなぎに使うことで「友つなぎ」といい,色んなやり方があります。

現在手打ちさらしなそばの打ち方の主流は,木鉢の中のそば粉に直接熱湯を注ぐ「湯ごね」です。これも友つなぎの一種です。

狭義の「友つなぎ」は鍋でゆるいそばがき,あるいはそばの糊をつくってつなぎに使うもので最近はあまり用いられない技法です。

20年以上前は,老舗系のそば屋さんや趣味人で友つなぎをする人がいたのですが,今はほとんどいないようです。

 今では,友つなぎをする人がほとんどいなくなったのは理由があります。

手打ちの変わりそばや,手打ちのさらしなそばが,震災や昭和の戦争,戦後の食料難で滅びかけたことがありました。片倉康雄氏が,手打ちの変わりそばや手打ちのさらしなそばを戦後復興させました。

そのとき,幾つかある友つなぎの技法の中から湯ごねを採用し,その後手打ちそば教室でも湯ごねを教えていたこともあって,湯ごねが主流になったようです。

片倉康雄氏の著書に依れば,狭義の友つなぎは定量化が難しく量産に向かない,方法によってはのびたときにまずいと書いてあります。これに異を唱えるつもりはありませんが,片倉氏は,さらしなの生一本,つまりさらしなの十割そばの製法についての説明として書いているもので,割粉を入れた場合ではありません。

小麦粉を2,3割入れるとのびたときの劣化はかなりおさえられます。それに趣味でそばを打つのであれば,茹でたてで食べるのが普通ですから,のびたときにまずいというのは問題ではないと思います。

 余談ですが,片倉康雄氏の経営していた大森一茶庵は遊郭の近くにあり,変わりそばのような粋なそばは遊郭からの出前注文が多く,のびてもおいしいというのが,重要だったようです。

最近は茹でたてが当たり前で,のびてもおいしいそばなんて流行りませんね。「歯ぬかり」をのびたそばの食感と誤解している人もいて,のびたそばは不味い物と決め付けている人が多いようです。

もっとも茹でたてならまだ食えるけど,のびたら食えたものじゃないなんてそばもありますし,自称そば通という人がそういう茹でたてでないと食えないそばを絶賛したりしていますが。

 今回説明する柚子きりは,いまではほとんど忘れられた狭義の「友つなぎ」です。そばの糊でつなぐ方法です。

湯ごねの場合,温かいまま伸すと表面積が大きくなって一気に表面が乾燥してひびや折れの原因になります。折れなくても歯ぬかりを起こします。伸す前に必ず冷ます工程が必要です。そのときに蒸発する水分をあらかじめ予想しておかねばならないし,生地が硬くしっまって来るので,「練り」という工程が必要です。慣れればそう難しくは無いのですが慣れるまでがちょっと大変です。

今回はさらしな粉でのりを作り冷ました物を使います。水回しの後,冷ます工程が不要で普通の二八に近い感覚で打てます。

前置きが長くなりましたが,ここからが作り方です。

■ 材料  

   
そば粉(さらしな粉) 300g
小麦粉 75g
ゆず 小 1個
210〜220ml
   

そば粉:さらしな粉という真っ白いそば粉を使います。白いそば粉を使う事で,そばが柚子の黄色でうっすらと染まります。

柚子:きれいに洗って水気を拭取ったもの。粉500g〜1kgに中くらいの大きさ1個ですが,好みで加減しても構いません。皮の表面の黄色いところだけを使います。この部分が最も香りが強いからです。

おろし金:できれば目のこまかいもの.柚子の表面の黄色い皮だけをおろします。

片手鍋:大きすぎると混ぜにくいし水で冷やすのでボウルに入る大きさがいいです。

ボウル:片手鍋がすっぽり入る大きさのもの.洗い桶や大きな鍋でも構いません.

耐熱性のゴムベラ:木ベラやシャモジでも構いません。

加水量はさらしな粉の場合56%〜60%ぐらいですが粉によっても違いますし糊を作る段階で1割ぐらい蒸発しますから必ず微調整用の水を用意してください。

さらしな粉の1割ぐらいを使って糊を作ります。

1. 鍋にさらしな粉30gをとり210cc〜220ccの水を入れて溶かします。
粉に水を入れる水は少しずつ入れて練るようにして徐々にのばす様にするとだまになりにくいです。もしだまになったら10分ぐらい放っておくとだまがなくなります。
2. 鍋を火にかけ焦げ付かないようにへら等で混ぜながら加熱して糊(やわらかいそばがき)にします。
のりをつくる糊になったらへらに付いた糊を少しとってなめてみてください。舌にザラツキを感じなかったらOKです。さらしな粉はきめが細かいのでザラツキがわかりにくいのでご注意ください。

3. ボウルに冷水を入れ鍋を浸けて糊を混ぜながら冷まします。
のりをひやす糊は対流しないので鍋肌しか冷えません。また部分的にひえるとそこだけゼラチンの塊のようになることがあり後で水回しに面倒なことがあります。軽く混ぜながら冷やして人肌以下30度Cになれば大丈夫です。冷ますときによく練らないとそばがボソボソになります。

4. 残りのさらしな粉と小麦粉をふるいにかけ木鉢でざっくり混ぜて糊を入れて水回しをします。

みずまわしすりあわせるすりあわせるようにして,のりとそば粉を混ぜ合わせます。微調整用の水を鍋に入れ鍋肌に残った糊を洗い微調整に使います。普通の二八よりも柔らかくします。普通の二八そばの固さでは固すぎてヒビが入ります。

テスト
水廻しの加減の目安は少量を
まるめて指で押しつぶしてひび割れなければOK

頃合を見てくくります。

5. 柚子の皮の黄色いところだけをすりおろし,そばの生地に練りこみます。
ゆずをおろすおろし金に付いた皮はそばの生地でトントントンとかるく叩くようにして拭取ってください。
あとは 普通のそば打ち と同じです。よくこねて,のして,たたんで,切って出来上がりです。

そばうちユズをトントンしているところ
 

慣れれば 1.5キロ位打てるようになりますが,柚子きりは腹いっぱい食べるものではないし,柚子の風味は飛びやすく翌日まで持ちません。

柚子を入れなければ普通のさらしなそばです。冬だと柚子,春はヨモギ,夏はシソ,秋はごまなど季節感を出せます。赤ならパプリカ,乾しエビの粉末,黒は黒練りゴマなど彩りも楽しめます。

さらしなそばは出汁を利かした薄口仕立ての汁でもいけますので,吸い物の身に使うのもよろしいと思います。

 

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