むかしは、手打そば屋と二八そば屋は店構えからして違っていたそうです。暖簾をくぐるとすぐ客席なんていうような店は二八そば屋で、手打そば屋には、2階にお座敷などしつらえてあり、お客は座敷に座ってお酒でも飲みながら、ゆっくりそばを待ったものだそうです。
そんな昔のそば屋をたずねて、札幌市厚別区の北海道開拓の村へ行ってみました。
ここは、明治大正時代の北海道各地の建物を保存展示している、いわば北海道の明治村です。そのなかに「三枡(さんます)河本」という明治時代に小樽で開業した蕎麦屋があります。この時代のそば屋は、たぶん愛知県の明治村にもありませんので、とても貴重な建物です。
左右に出入り口があるところは、東京のまつやに似ています。まつやは、両方がお客用の出入り口ですが、ここは、向って左がお客用、右が勝手口です。看板の裏からレンガの煙突がでています。これは、そば茹釜の煙突です。
・玄関
さんますやの玄関のれんをくぐると、左側には調理場、ついたての向こうには階段があり、客席は、2階になっています。
・調理場
さんますやの厨房調理場です。店の大きさのわりには狭いような気がします。左に2連かまど、右にそば茹で釜。そば茹釜の外側の湯をためておく部分を銅壷といいますが、本物の銅でできています。現代のそば茹釜は名前だけ銅壷ですが、ステンレス製です。
さんますやの厨房水道蛇口もありますが、井戸水を使っていたらしく、手押しポンプがあります。現代の調理場との違いは、冷蔵庫とガス器機がないこと。
・階段
さんますやの階段
階段の手すりは洋風のデザイン。
・客席
2階の客室2階の客席です。畳敷きで、各部屋の仕切りは襖です。テーブルはケヤキ材の黒塗り。ストーブは無く小さな火鉢が置かれています。階下のそば茹釜の熱が、2階まで温めていたのでしょうか。