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ぶっかけそば

 
(2008.4.25)

最近そば屋さんでよく見る「ぶっかけそば」ですが、私の記憶では10年くらい前までは無かったように思います。「ひやしたぬき」「ひやかけ」とかはありましたが。(うちは昔からやってるよというお店があったらごめんなさい。)

しかしこの「ぶっかけ」なるもの、実は江戸時代からあるそばなんですよ。なぜか19世紀の始め頃消えてしまったらしく、幕末の百科事典といわれる『守貞漫稿』という本にもみあたりません。200年の時をこえて復活したというのもおもしろいですね。

江戸時代に日新舎友蕎子という人が書いた『蕎麦全書』(1751年)という本があります。著者の日新舎友蕎子という人は、薬問屋の旦那さんかなにかで、そば打ちを趣味でやっていたらしいのですが、正確なところ何者なのかよくわかっていません。

その日新舎友蕎子が蕎麦について見聞きしたこと、蕎麦についての考え方などを書いているのですが、そのなかに「ぶっかけそば」誕生のいきさつが記録されています。

はじまりは日本橋新材木町の信濃屋。今の東京でいえば日本橋堀留町あたりでしょうか。当時この新材木町界隈は荷物運びを生業とする人たちが集まってくるところだったそうで、信濃屋はここの荷運び人夫あいてに蕎麦を売る小さな蕎麦屋です。

荷運び人夫たちは立ったまま食べられるように、冷たいそばをいれた丼鉢にそばつゆをブッカケた、というのが「ぶっかけそば」の始まりです。このぶっかけは元々冷たいそばでしたが、寒さをしのぐため温めるようになります。

さて、これからが迷宮なのです。
かけそばの起源に、この温かい「ぶっかけ」から「ぶ」がとれて「かけ」になったという説があります。では信濃屋の「ぶっかけ」以前に、かけそばは無かったのか?というと、そうでもなさそうなのです。

たとえば、屋台のそば。
そばの屋台は17世紀中頃からあるのですが、これが「もりそば」であったとは考えにくい。やっぱり熱い汁をかけたそばと思うのですが …

 私の記憶では、「ぶっかけそば」と同じものは「冷やしナントカ」とか、または大根おろしが入ることが多いので「ナントカおろし」と呼ばれていたようにおもいます。(もちろん今でもそう呼んでいる店ありますし、ぶっかけと冷やし両方置いている店もめずらしくありません)

 とりあえず、そばについて書かれた1990年代の本に、「ぶっかけそば」の名前があるかどうか確かめてみることにしました。

  • 『ベストオブ蕎麦』(文芸春秋)1992年
    北海道から沖縄まで、161軒のそば屋を紹介したガイドブックですが、『ぶっかけそば』はありませんでした。
  • 『そばうどん麺料理』(旭屋出版)1993年
    全国の有名店のそばとうどん200品が掲載されていますが、これにもありません。
  • 『そばうどん25』(柴田書店)1995年
    年1回発行の飲食店経営者向けの雑誌です。これにもありませんでした。
  • 『そばうどん26』(柴田書店)1996年
    これにもありませんでした。
  • 『そばうどん27』(柴田書店)1997年
    これは、手もとに無いので未確認です。
  • 『そばうどん28』(柴田書店)1998
    ここまできてやっと「ぶっかけうどん」を見つけました。
  • 『そばうどん29』(柴田書店)1999年
    これにはありませんでした。
  • 『そばうどん30』(柴田書店)1999年
    1999年になって、ついに柴田書店そばうどんに「ぶっかけそば」がでてきます。

ということで、やっぱり「ぶっかけそば」1990年代の後半から一般的になったもののようです。 もちろん断言はできません。すくなくとも1990年代以前には一般的な名前ではなかったようです。

 ここからはただの想像です。1995年ころに讃岐うどんブームがありました。このときに関西や首都圏に進出した讃岐うどん店の「ぶっかけうどん」が、そば屋のお品書きにも取り入れられて「ぶっかけそば」になったのではないでしょうか。

 


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